＊ ご注意-----以下の小説の抜き書きは少しHシーンです-----苦手な方はご遠慮下さい。

　　群青色の一面の石壁には、群雲の様な文様が豪壮繊細に彫られていた。そしてその文様の中に様々な形の金銀赤青七色の宝石が、近く遠くと空に見る星の如く配されている。色の割合は銀が多数を占め、それは燭台の火を特に良く反射するらしく、揺らめく光源に思い思いに瞬きを返していた。

　濃紺の天鵞絨に散らされた銀水晶の星…。

　まるでエルダマール湾で見る、空のようだ…。

　銀の降るような星の壁の美しさに、広間の中ほどに戻った竪琴の君主は四方を見渡してうっとりと眼を細めた、…とその時、背後の扉が開かれ、銀の星々が一斉に大きく瞬いた。

　「そのままでいなさい…」

　主君の気配に慌てて振り返ろうとしたタサールを、フィンゴルフィンの穏やかだが力のある声が留めた。

　「竪琴は卓の上に置きなさい」

　何事かと訝しみながらもタサールは、静かに近づいてくる主君の言葉に従い、その竪琴を手放した。

　「あ…っ」

　主君の腕が不意に自分を抱きしめ、タサールは思わず声を上げた。

　「思った通りだ、似ているな」

　フィンゴルフィンはその襟足に顔を寄せて言った。

　「…え？」

　予期せぬ言葉に、タサールは小さく驚きの声を漏らした。

　「似て…おりますか」

　「ああ」

　抱きしめた両手を、そのまま上と下へとタサールの体に辿らせながらフィンゴルフィンは言った。

>>>>>> 眩暈　

＊タサールは後のゴンドリンのロード、竪琴家のサルガントの二つの木の時代の名前（二次設定）です。